「先生、いっちょうガツーンとキツ目にやってください」と言う経営者の方がおられます。
特に若手社員を対象にした研修の時が多いでしょうか。
きっと、普段ギュウギュウ締めても上司の言うことを聞かない、仕事をダラダラやっているように見える若手社員に対する日常のフラストレーションからくる言葉なのでしょう。
外部の講師からガツーンと言われて、他社の若者と比較してダメ出しすれば、少しは態度も良くなるだろう、自分たちの留飲も下がるし…そんな気持ちが見え隠れします。
しかし、研修でガツーンとやってもほとんど効果はありません。
きっと「うるさい講師だな。まあ会社が呼んだ講師だから、当然と言えば当然だな。ああ早く終わらないかな。でも、考えてみれば今日は会社公認で仕事をしなくていいのだから、ラクと言えばラクか…」
こんなことを受講者が思ってしまったら、研修効果は期待できません。
上手な講師は受講生に寄り添いつつ、上手に諭(さと)したり、ここぞというときには“厳しく”言ったりすることを使い分けます。
「いままで経営者が悪いと思っていたけれど、自分にも改善点があるんだな」と受講生に思わせながら、少しずつ仕事に対する姿勢にも気づかせます。
『きつく』と『厳しく』を使い分けるのです。
ですから、日頃は従業員にモヤモヤしていても、講師にキツクをリクエストする必要はありません。
「厳し目にお願いします」これで、十分です。
加えて、普段はキツく言っている上司や経営者が「日頃はよく頑張ってくれているし、君たちには感謝しています。
今日は、日頃の君たちがダメだから研修をするのではなく、更に延びて欲しいから研修を実施します。
君たちには期待していますから、しっかり自分のモノにしてください」と、冒頭でポジティブなメッセージを発すると、いつもキツく言われている受講生はちょっとびっくりします。
キツ目のメッセージを渡されるより、このひとことの方がよほど効果的です。