日本では、管理職への昇進昇格において、なんらかの登用試験を課している企業が60%以上とのデータがあります。また、日本能率協会(JMAM)の「管理職への昇進昇格審査」に関するアンケート調査(2022)によると、登用試験は筆記、論述、面接だけでなく、対象者を育成しながら管理職を目指させる長期的な育成制度を導入している企業も一定数存在しています。
一方で、中堅・中小企業に目を向けると、昇進の判断基準が「上長の推薦のみ」というケースも少なくありません。これでは、管理職登用において、迅速な意思決定というメリットがある反面、評価の客観性や再現性という観点では課題を残します。結果的に、管理職には昇進したものの、業務内容は従来とほぼ変わらず、肩書きと手当だけが変わった(?)という名前は管理職であっても、フィールドプレーヤーならぬ、フィールド管理職が量産されるというケースもちらほら。
しかし、管理職とは単なる上位プレイヤーではありません。
管理職は、経営者の代替機能を担い、部門単位で意思決定と成果創出を行う経営推進者としての役割を果たさなければなりません。これが、管理職とは「経営管理職」であると言われるゆえんです。この定義に立つと、求められる能力がクリアになってきますね。経営管理職に必要なスキルは、「組織として成果を出す力」・・・のはず?ところが、日本企業では依然として「成果を出した優秀なプレイヤー」が管理職に昇進する傾向が強いのではないでしょうか。これは合理的に見えて、構造的なミスマッチを生みます。その理由は・・・
- 組織に任せる、育てる、任せきるといった他者を使って成果を最大化するマネジメント手法を知らない
- プレイヤーとしての成功体験が強いほど「自分でやった方が早い」という思考に陥りやすい
- これらの結果として、部門全体をマネジメントできず部門成果があがらない・・・という現象が起きるからです。
まさに「名選手、名監督ならず」です。では、組織マネジメントに必要な要件は何か。それは・・・
■コンセプチュアルスキル(概念化能力)
・全体最適で物事を捉える力・課題の本質を構造的に捉える力・戦略と現場を接続する思考力
■ヒューマンスキル(対人関係能力)
・部下を動機づける力・信頼関係を構築する力・部下を信用して任せ、部下を育てる力
この2つがなければ、専門知識や成果を出した経験が豊富にあっても「組織として成果を出す」ことはできません。
しかし、これらのスキルは、自然に身につくものではありません。
組織が意図的・意識的に学ばせて、トレーニングし、実践を通じて経験を蓄積させなければなりません。管理職への登用とは単に過去の成績からの「選抜対象」ではなく、「育成対象」となれる存在かどうか?。昇進はゴールではなく、部門経営管理者としてのスタート。この点に、組織も本人も気づけるかどうかが、組織のパフォーマンスを左右し、管理職としての成否を分けるのだと考えます。
