前回は講演とビジネスセミナーにおける先生や講師の役目についてご説明しました。
これらに対して、研修講師に求められる要素について解説しながら、引き続き研修のリモート化について考察しましょう。
まず、研修講師に求められる要素。
それは、いかに従業員や社員を育成できるスキルを保有しているかどうかと言う点です。
研修講師には研修を通して受講生を育成・教育し、トレーニングしながら成長させることができる役目を期待されます。
当然のことながら研修受講の後には研修効果も求められます。
前回例に出した営業研修であれば、研修受講後に受講した営業研修の内容を営業担当者が現場実践して、効果があったのかどうか?の検証も行われます。
そのため、研修講師は研修時間中に講義をするだけでなく、受講生の輪の中に入りディスカッションに介入して討議の方向性を修正したり、営業ロールプレイングではロープレを活性化させたり、上手く出来ない受講生にはお手本を示したりすることが重要です。
特にディスカッションにおいてはAと言うグループのディスカッションに加わりながら、同時にBグループの討議を聴き、Cグループの活性度合いをチェックして特記事項や個別受講生をアセスメントしながら研修報告書に発言内容を入力する。また、発言量の少ない受講生は体調不良なのか、意識レベルが低いのかを判断して的確に声がけしながら、次の休憩時間のタイミングをはかる…などと、超人的な役目もこなさなければなりません。
『研修講師は、受講生の輪の中に入る』
この点が、企業内研修のリモート化が難しい点です。
講師が遠隔から操作するリモート研修では、講師はカメラの向こう側に行くことができません。
受講生の様子を全体的に把握することはできますが、個別に研修会場(例えば各営業所単位など)で受講しているグループディスカッションの発言をチェックしたり、例え一箇所に受講生が集合している場合でも同時にグループ毎に進行している各ディスカッションの内容を把握し、個別の受講生の発言をチェックしたりすることはできないのです。
一斉にグループディスカッションが始まれば、高機能スピーカーシステムが全ての会話を拾ってしまうので、講師側には雑音でしか聴こえません。
各テーブルにwebカメラと音声コミュニケーション機器を設置することで各グループの映像と音声を拾うことはできますが、今度は講師サイドでこれらの情報を観察して分析する必要が出てきます。
ひとつひとつの討議を的確に聞いて、個別の討議へ介入しながらアドバイスをする…となると他のグループに目が行き届かなくなります。
講師サイドの人員を増やして受講生の発言や受講態度をチェックすることも可能ですが、今度はメイン講師とサブ講師との意思のやり取りが必要となり、意識を全力で受講生に向けることが難しくなります。
それだけではなく、時間のロスも大きくなるでしょう。
もちろん、ここまでやろうとするとクライアントも研修のためだけにかなり大がかりなシステムを構築しなければなりません。おのずと、大手企業が保有する研修センターだけが対応可能となりそうです。
研修のリモート化は、従業員がテレワークで勤務している場合には更に実施が難しくなります(続く)。