パーソル総合研究所が実施した『グローバル就業実態・成長意識調査(2022)』によると、日本は勤務先以外での学習や自己啓発に対して「自己投資を行っていない」と回答した割合が約52%と、世界的に見ても極めて高い水準にあるようです。つまり、日本のビジネスパーソンの半数以上が、1年間で自分の業務に関係する本1冊すら購入していないという結果に。一方で、インドやインドネシアなどでは、「自己投資をしていない」と答える人は、わずは数パーセントとごく少数にとどまります。
なぜ、日本のビジネスパーソンは自分で学ばないのか。
あるコンサルタントは、「日本では自己啓発が、会社に対する背任行為のように捉えられる側面がある」と指摘していました。確かに、業務が立て込んでいる中で「今日は資格学校があるので先に失礼します」と言うのは、心理的なハードルが高いものです。そこで私は、何度か研修やセミナーで、「なぜ、私たちは自己啓発をしないのでしょうか」と、受講生に問いかけてきみました。しかし、明確な理由はなかなか出てきません。
「平日や休日は家庭のことで忙しい?」「会社が研修(Off-JT)を用意してくれている」といった意見は出ますが、決定的な要因とは言い切れない印象です。そこで、いくつか仮説を立ててみました。
一つ目は、「学生は勉強、社会人は仕事」という固定観念。
卒業と同時に「これで勉強から解放された」と考え、仕事に専念することが優先される。組織も、「勉強する時間があるなら仕事を優先」という組織中心の発想につながっている可能性があります。
二つ目は、組織風土。
身の回りで積極的に自己啓発をしている人が少ないと、自然と自分も学ばなくなる。組織全体として学習する文化が弱いと、個人の行動も変わりにくくなります。実際に、多くの社員が積極的に自己啓発や自己投資している企業が数多くあります。
三つ目は、雇用の安定。
自己啓発をしなくても、一定の評価と収入が維持される環境では、学ぶインセンティブは相対的に弱くなります。私はこれが大きな要因ではないかと考えています。
さらに、制度面の影響も見逃せません。特にホワイトカラーでは、会社主導の人事異動が多く、専門性を深めにくい構造があります。結果として、「専門性を高めるための自己投資」という発想自体が育ちにくい側面があります。もちろん、ビジネスパーソンに求められるのは専門性だけではありません。コンセプチュアルスキルやヒューマンスキルといったポータブルスキルも重要です。しかし、これらは“知らなくても当面は仕事が回る”ため、優先順位が下がりやすいのが現実です。
前述のとおり、インドなどでは、自ら学び、スキルを高め、より条件の良い企業へ移るという意識が強くあります。それに比べると、日本では「学ばなくても一定の安定が得られる」環境が、自己啓発の必要性を感じにくくしているのかもしれませんね。
ただし、見方を変えれば、日本でも約半数の人は何らかの自己啓発に取り組んでいます。
つまり、「学ぶ人」と「学ばない人」の二種類のビジネスパーソンが存在しているわけですが、さて、あなたはどちらに入っていますか。
